祖父が、先週、旅立った。祖父の信仰する宗教で言えば、「出直した」ということになるということだそうな。肉体は借り物であって、魂は再び神様の所に一度戻って、また、肉体を借りて、現世に戻ってくるというようなこと。なるほど、そういう宗教も有るだろうという理解はしている。
88歳という年齢で祖父は亡くなったのであるが、平均寿命なるいい加減な統計から考えても、長寿と言えるのではないか。数年前までは随分と元気だった事を考えても、それはありがたいことではあったろう。
祖父との思い出について語りだせば、それはかなりの長さになる。小学校に上る前には、私は祖父母によって、養育されていた時期がある。それは、祖父が怪我で自宅に居たことも有るだろうし、弟が産まれたばかりでもあったので、父母にとっても都合が良かったのかもしれない。
そういうわけで、祖父母との思い出は枚挙に暇がない。様々な場所に連れて行ってもらったし、周りの子供達が羨むようなプレゼントも貰った。昭和一桁産まれの祖父にとっては、モノの豊かさは善であり、あるいは、飽食は善である。程々の物を使うということも考えていなかった人であり、暮らし向きは別にして、メガネや腕時計に至るまで、随分と良い品を使っていたことを思い出す。若いころから、洒落者で通っていたらしい。
あまり、広範囲にお知らせをしなかった事もあって、簡素な式であったが、親類縁者は集まり、祖父のことを思い思いに語った。その場で立ち止まる事が許されるのはせいぜい祖母のみであって、私を含めた他の者はすぐに次のことを考えなくてはならない。これからしばらくは相続も含めて、多くの時間を取られるだろうが、それもまた、人が暮らしていく上で致し方のないことであり、滞りなく、それを行うことも私に求められている事なんだろう。
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